インスタントセックス

エロにおける自制心を捨ててイギに欲望に正直になってもらいました。うずひさんに捧げます。


 寝ている自分に押しかかるようにして,フランスが耳元で囁く。また,あぁっ,とか死ぬほどいやらしい声が出て,イギリスは思わずシーツに顔を押し付ける。顔が見えなくなったのを良いことに,自分でして欲しいなぁ,とか立て続けに耳元でつぶやくフランスは,ついでといわんばかりにイギリスの携帯をベッドサイドのテーブルに戻す。
「もう,フランス…」
 いつもの調子で怒鳴れたら,罵れたら,殴れたらそうしたかったけれども,力が入らなかった。シーツからくる,と顔を向けると,フランスは思いのほか真摯な顔をしていた。
 いかせて,と自分がまさか素面で言うとは思わなかった。
 フランスはただ低く喉の奥で笑って,イギリスの性器に右手を掛ける。かーわいい,と言われて,また体の奥がひくついた。左手は早くも後ろの穴の入り口の皺を確かめるように,そっと爪を立てる。
 自分で擦るとなんか比べ物にならない。
 だってフランスが。
「あああああっ」
 そう悪いなら全部フランス。
 白濁の飛距離は,ひさしぶりにすごかった。先端をフランスが押さえてくれたからどうにか顔までは飛んできませんでした,というところ。力なく仰向けに転がる。右の手のひらで受け止めた精液を舐め取るフランスの仕草は,羞恥よりも先に色っぽくてたまらなかった。
「な,んで…」
「坊ちゃんが思ってたよりも一本はやいユーロスターに乗りました。以上」
「鍵は」
「合鍵」
 ああそういえばそんなの渡したっけな。
 時間の読み違いが完璧に自分の敗因らしい。と分析したところで,もうどうしようもない。
 まだ息が上がったままで,いった衝撃から抜けられないのに,フランスが入り口をまさぐる手はとまりそうになかった。とにかくいった直後はどうしようもないほど敏感だからやめてほしいのだけれども,たぶんもうそういったところで止めてくれないだろうし。覆いかぶさるフランスのデニム越しに当たる性器はどうやら勃起しちゃっているらしいし。
 何よりもここで止められると若干自分が不本意だ。
 いやそれを言い出したらこの状況自体が不本意なのだが。
 勝手知ったる,という感じで,左手を入り口で遊ばせたまま,フランスは右手だけでテーブルの下の小さなチェストからローションを勝手に取り出した。
「お前,なんか,いいの?」
「何が」
「前戯とか」
 ちょっとした親切心のつもりで尋ねたのだが,フランスにはそうは聞こえなかったらしい。によ,と笑顔を浮かべられて,それはそれで困った。
「心配してくれるんだ,坊ちゃんやさしい」
「だって,いつも,触れとか言うくせに!」
「今日は,早くイギリスに入れたいの」
 そこで呼び方を使い分けるなんてずるい。
 たぶん,イギリスが切羽詰っているのを見て,これは焦らすと可哀想だとか思って,自分が入れたいとか世迷言を言っている風を装ってくれているのは,イギリスでも分かった。だけれどもローションを垂らされて,指を一本いれられて,もうそれにどうにか反応する余裕とかもなくなってしまった。
「あっ」
「今日,すごく熱い」
 耳元でフランスが囁く。もう,どうしようもないじゃないか。
「だって,寂しかった」
 一ヶ月とすこし,短いようでまあ長かった。自分で抜いても,フランスのもたらしてくれる手の快感は得られない。ああでも,電話越しは悪くないかもしれない,と少し思った。
 時と場合によりけりだけれども。
 フランスはどうやらイギリスの言葉に火がついたらしく,右手をイギリスの中に埋め込んだまま,ローションと同じ棚から左手でゴムを取り出した。これで一ヶ月ぶりだからナマで,とか言われたらぶん殴る大義名分が出来たが,そんなところでまた,ずるい。
 それを手の傍に置いたまま,フランスはイギリスが足元に丸めて放って置いたイギリスの着衣を全部床に落とし,そして指を二本に増やした。ベルトを引き抜く音が聞こえたから,たぶん前をくつろげたのだろう。確かめようにももう,イギリスは身を捩りながら快感を叫ぶしか出来ない。
「どうしたの,いつもよりも乱れて」
「お前,が,近くにいるから」
 いいだろ,と。
 気分が良いのでフランスを翻弄するような言葉も吐いてやる。
 フランスはイギリスの挑発に素直に乗るらしく,じゃあ遠慮なく,とか言って,イギリスの中のしこりを二本の指でかわるがわる押しつぶす。両足が浮いて泳いだ。快感の余り目をきつく瞑ったけれども,フランスがゴムの個包装をぴ,と裂く音は聞こえた。右手は中に突っ込んだままだから,左手で持って歯で噛んで裂いたのだろう。少し見たかったな,と思った。フランスのそういう仕草は,嫌いではない。
 指を引き抜かれて,もうずっと求めっぱなしの穴が一瞬空虚さにひくついた。そこを必死で力を抜いて,受け入れる体制を整える。
 フランスが中に入ってくる瞬間が,好きだ。
 ずしり,と体を開かれる感覚。
「ああっ,」
 声にならず,ただフランスの背中に手を回す。正常位,とフランスが嬉しそうに呟いた。腹立たしいが,今日はフランスの好き勝手にされても,まあ,いいことにしておく。
 正常位は別に普段しないだけで,嫌いだけではないし。
 だって正面にフランスの顔が見られるわけだし。
 そう思って,ぼんやりとフランスの顔を見たら,笑う余裕がない,みたいな,ずるい顔をしていた。少し良い気分になった。だけれども,それよりも先に自分の後ろが無意識に,きゅうきゅうと締め付けた。
「ああもうイギリス,まだ全部入ってないのに締め付けないで」
「や,ぁあ,むり…」
「今日の坊ちゃん随分と素直ね。どうしたの」
 揶揄されても,こんなに体のセーブが聞かないのは久しぶりだった。
 息を吐いて後ろを緩めたところに,フランスが押し込んできた。腰が跳ねるのを,フランスが掴んで留める。見上げる表情はまだ余裕がない,それだけが辛うじて救いだった。自分はもっとすごい顔をしているに決まっている。
「ぜんぶ,はいった…?」
「ああ,動くぞ」
 がくがくと揺さぶられる。自分の腰が動いていることは分かった。どうやら,思っているよりも今日の自分はどうしようもないらしい。
「ひぁあっ」
 フランスが,擦ってはいけないところを容赦なく攻め立てる。
 一連の挿入で,すっかりあつくなってまた勃ちあがってきたところを,肉厚な掌で包まれる。
 もうだめ,今日は落ちる。
「は,ぁあ,ふらんす…」
「今日は随分と素直な上に敏感ね。かわいい」
「だ,って…」
 かわいい,という言葉が,ひさしぶりに聞けるとか。
 フランスの顔が,色っぽいとか。
 電話で翻弄されすぎて,なんだか素直にならなきゃいけない気がするとか。
 言い訳は多々あったけれども,結局イギリスは,フランスの首に腕を回して,上半身を起こしたままの彼を引き寄せる。
「あいたかった…」
 ああもう素面でこんなこと言ったら株価暴落する。
 ついでに自分はまたおかしくなる。
 言った時に,後ろを締め付けて,フランスは少し眉根を顰めた。それをやり過ごすと,余裕のないとろけた顔をしているのに,それでもそれはありがとう,と耳元でにやりと笑った。そのままキスをされる。はじめくちびるを合わせて,すぐに舌先が絡み合って,そしてフランスの舌がはいってきて,上の歯の裏とか,舌の付け根とか,好き勝手にまさぐる。繋がったところも良いようにされて,イギリスの腰が跳ねて,二人の腹に挟まれたイギリスの性器もすっかりその気になっていた。刺激を求めるように思わずフランスの腹筋にこすり付けてから,さすがに,と思って身を引いたけれども,すごくしつこいキスをやめたフランスは,耳元に唇を寄せてまた,かわいい,だなんて繰り返す。
 そのまま少し起こしていた上半身を倒してきて,そうしたらいい具合に二人の腹の間にイギリスの性器が収まって,中ももうぐしゃぐしゃにされて,イギリスはもう,叫ぶように喘いだ。
「ふ,らんす,…もう,いくっ」
「いいよ」
 ああ,今日は声とか,彼とかに翻弄されすぎだ。
 自分ではもう,どうすることもできない。
 ひときわ奥まで入った瞬間,擦ってはいけないところをまたフランスが抉った拍子に,声も出せないまま,イギリスは思わず射精した。そのときに締め付けた後ろで,どうやらフランスも出したらしい。
 ずるり,と引き抜かれ,ああ,と声が上がる。どうやらとりあえず今は一回で我慢してくれるらしい。まだいった直後で何もよくわからないイギリスの腹に散った薄い精液を,フランスはゆっくり舐め取る。なにしてる,とか罵りたかったけれども声にならない。まして尿道の中に残っているものをすすり上げられると,イギリスは身を捩って悲鳴を上げたけれども,フランスは,中残ってるといやでしょ,とかのたまう。
「も…う」
「飯食ったら風呂で一回,それからベッドで朝まで,てのでどう?」
 全てを台無しにする発言だけれども,なぜか素直になったままの自分はうん,と頷いて,フランスを調子に乗せてしまったことに気付いたのは,随分と後のことだった。

***

誰もお口でお掃除まで書けとは言ってない。
しかもこれはテレセクという趣旨から大分逸脱している。
っていうか長っ!
うずひさん,お待たせした挙句にこんなでもうほんますみませんとしか…
でもテレセクシーン書くのちょう楽しかったです←
20081110