花火の下の恋
※学パロ文化祭月間〆 ナチュラルに一発やった後です。
「ちゃっかりしてるよな」
「誰が」
生徒会室という一応学校内の環境で,無駄に鍛えられた体を見せるフランシスに,アーサーは呆れた声を出す。もちろん,批判の意図は忘れない。
後夜祭はもうとっくに始まっていて,用意の良い誰かが運動場に木を組み上げて火がついている。高く上がる炎は,生徒会室のパイプ椅子を並べて横になっているアーサーにも見えた。打ち上げ花火が上がっているのは,確か菊の身内だ。アーサーはため息をついた。朝の準備中に様子を見に来た菊は,何も言わずにフランシスとハイタッチか何かをしていた気がする。
その原因となったチャイナドレスはいまだに足に絡み付いている。フルレングスのドレスは,ミニスカートよりはマシと取るか,一度に見えたときの太ももをどう処理するのか。とりあえず,目の前の男のお気には召したらしい。ちなみに彼のほうはエグいナース服を早々に脱ぎ捨てて,全裸だ。着替えを生徒会室に用意していたのは,狙ってこの展開に持ち込んだのか,なんとも判別しがたい。色々と考える余裕をなくす羽目になるのは,いつものことだ。
クラスの展示も早々で抜け出してしまった。まぁ,あのクラスの面々はなんだかんだでしっかりしているから,何かあってもうまく裁くだろう。幸か不幸か自分たちの関係性もうっすらと知れ渡っているようだし,この際そういった特権はありがたく使わせていただくことにする。
何か適当なことを言って教室を抜け出した後,フランシスに手を引かれるように生徒会室に連れ込まれたとき,一切期待をしていなかったと言えばうそになる。電気はつけず,鍵をかければ,外から見たときの様子は不在にしか見えないはずだ。この学校の文化祭は,生徒会はノータッチの文化祭委員が全て遂行するから,生徒会室を態々訪ねてくる人間もいない。したがって,いきなり壁に体を押し付けられて,チャイナドレスのスリットをかなり上から割られて,太ももを撫でられたことも,別に,悪くはなかった。そのまま立ったまま持ち込まれて,まぁ,毛とか髭とかがエグいけれども,認めなければならないとすればつくりは綺麗な男が,悪戯を仕掛けてくると言う設定は,正直,興奮してしまった。
「アーサー,声抑えて」
なんて言われた気がする。
思い返しても悪くはなかったと思ってしまう辺り,自分はやはり末期だ。それが単に青少年の性的感情として末期なのか,それとも単にフランシスに対して末期なのかは,この際,考えないようにする。
打ち上げ花火が上がって,電気をつけていない生徒会室の中が一瞬照らし出される。パイプ椅子を二つ並べて横になっているアーサーの頭の上で,フランシスもパイプ椅子に腰掛けていた。アーサーが動けるようになったら,適当に人ごみにまぎれて学校から脱出すると言う算段らしい。花火を見ている顔くらいしか部屋の中に見るものがなくて,だから彼がふと自分のほうを向いて,アーサーの目線が自分に向いているのを見て笑っているのを見て,とりあえず言っておいた。
「別にお前なんか見てねぇ」
「何にも聞いてないよ」
苦笑いしながら言うフランシスは具合どうだ,とついでのように聞いてくる。ん,と呻いてパイプ椅子の上で腰をひねってみる。チャイナドレスの衣擦れの気配がして,多分太ももから下の足が全部見えているけれども,それよりもまだ体を起こすのが億劫で,無理,と端的に答えておく。
「ねぇアーサー,なんで誘い出されてくれたの」
「知るか」
フランシスが,ぎし,と音を立てて椅子から立ち上がり,それからアーサーが横になっている隣の床に座り込んだ。また一つ,大きな音を立てて花火が開く。まさか,誘い出して欲しかっただなんて,二人になりたかっただなんて,せっかく自分がこんな格好をしているから誘ってみたかっただなんて,言えるわけがない。高校生なのだから性に関する興味がないはずがないことを公言してギャップがエロイと各方面から評価されている自分でも,だ。
フランシス相手にそんなことを言えば,世界が滅びかねない。
そんなアーサーの逡巡にはお構いなしに,フランシスはアーサーの足を撫でる。先ほどまで散々揺さぶられた名残で,少しだけ構えていなかったその展開にびくりと震えて,身を預けていたのは頼りないパイプ椅子で,つまり,がたんとゆれたついでにアーサーの体がぐらりと傾いた。
あ,痛いかも,と思ったのに。
花火が上がる。
けして柔らかいとは言いがたいけれども,あたたかいからだの上に,出来すぎたタイミングで収まってしまった。花開くまぶしさに照らされたフランシスは,認めなければならないなら,だ,何度も言うけれども,でも,いい顔をしていると思う。
「言わなくても分かれ,ばぁか」
スカートを捌く。足をむき出しにしてそれからかがんでキスをせがむと,表情を見たフランシスに,えろいね,と言われた。どんな表情をしてるかは,まぁ,確かめたくもないけれども。
今日は特別だから,仕方ない。いろいろと。
***
9月に集中更新してた文化祭パロの〆です。
っていうかえらく間が空いてしまって申し訳ありません…!
多忙で共謀者さんに送る北の夫婦さんは,今週中に書ければいいなと…思います…週末に渡せると最高だよね!
連合王国が楽しみすぎてもうたまりません。
20081013初出