ショウ・ユー・アップ
さあ,勝負は始まっている。
さあ,勝負は始まっている。フランスを見ながら思った。舐めていたロリポップを一度口からはなし,わざとらしく舌先を丸めて舐めあげる。どうせお互い結論は分かっているのだから,過程も楽しまなくては。
たぶんフランスがそうなるように仕向けたのだろうけれども,体にアルコールが入るとなぜかいつも必要以上に大胆に誘いたくなる。目線だけをフランスに寄越す。彼は悪くない顔をしていた。たぶんこちらが目線をやった時点で,今夜の勝者は彼なのだろう。自分が先に本音を見せてしまったのだから。
ロリポップを舐め上げる。フランスの喉仏が少し動くのが見えた。彼の喉から肩にかけては自分よりも随分と逞しくて,そのいやらしさが好きだ。認めなければならないとすれば彼は男前だと思う。ああ,こんなことを考えている時点で,かなり欲しがっている。
「なーにイギリス,やらしい顔」
「生唾飲み込んでるオッサンに言われたくねぇよ」
「ひっどーい。まだ終電あるのにそんなこと言う?」
まさか,彼がそんなことできるはずがないのに。だけれども今日はとことん甘くしてやりたい気分だった。舐めていたロリポップを先ほどまで琥珀を注いでいたグラスに投げ込む。そしておや,という表情を浮かべているソファーに座ったままのフランスに跨った。
「帰る気なんかないくせに」
れー,と音を立てて舌を出すと,真っ赤,と顔を顰められた。ロリポップの色だろう。構わず,出した舌でフランスの下唇を口角から逆の口角へ舐め取る。フランスはまだ乗ってこない。跨ったあたりの下半身はもう反応しているのなんて当たっているから分かるのに。まぁ,お互い様だけれど。
フランスの目の青が,無性に欲しい。
目を開けたままの彼の目蓋にも唇を落とす。そのまま舌で眼球を舐めようかと思ったけれども,自分の舌が赤いのを思い出して止めた。あの青に人工的な赤なんて混ぜたくはない。それより,と思って焦点が合う程度に顔を離す。フランスは,なぁに,と唇だけで囁いた。
「まざっちゃいたい」
その青と,自分の緑と。
イギリスも唇だけで囁く。フランスは一瞬だけ固まった。その隙に唇を触れさせると,誘われたようにフランスがイギリスの唇を食んだ。まざりたいから,目なんか閉じるはずがない。勿体無い。上も下も食まれていた唇を引き剥がし,フランスの肉厚な下唇に軽く歯を立てる。フランスは下唇が好きだから。案の定ぴくりと体を震わせたフランスは,ソファーに置いたままだった手をするりと動かしてイギリスのシャツの裾に入れた。期待していたくせに思わずすくんで,唇を少しきつく噛んでしまった。その瞬間,フランスの上下の唇の合わせ目にあったイギリスの上唇を,フランスの舌が舐める。背中をまさぐってくる。
思わず膝を曲げるとテーブルに足がぶつかる。
先ほどのロリポップがグラスの中でころんと転がる音がした。
「っ,あ」
「イギリス,全部見せて」
またこの男は,逆らえない要求ばかり。
キスで湿る吐息で囁かれて,イギリスはこくんと頷く。
擦り合わせた下半身が,楽しい夜が長いことを予感させた。
***
なんか何のヤマもオチも意味もないエロが書きたくて。
にゃんにゃんさせたかったけど思いとどまってしまいました。
もっとしっとりディープでエロ話も書きたい。
ちなみに
show ... up/show up ...
(2)((英))〈人に〉恥をかかせる.
(3)((略式))〈人を〉見劣りさせる, しのぐ
(英)にこんなに萌える日が来るとは思わなかった。
20080912初出